千早茜「しろがねの葉」993冊目

いいお話だった。

家族を亡くした一人の幼い少女が、銀堀りの男に拾われて、誰よりもたくましく生き抜いていく一代記。読後感が切ないのは、彼女は才覚に恵まれていたのに、”女だてら”の英雄にはならず、静かに生きて消えていく者たちをただ見続けて送り続けていったからだ。彼女は人を愛しいつくしんだ、彼らの美しさを知っていた。でもどこかむなしい。

自分だって何も残せなかったけど、そんなもんだと思える。でも本のなかの誰かには、自分にできなかった大冒険をして、とんでもない夢を見せてほしい。。。という気持ちと、ああこの人も私と同じだ、と安心する気持ち。最近読む本は「自分とそう違いはない」と思うものが増えてる気がする。それも何か時代の流れみたいなものなのかな・・・。