高野秀行「イラク水滸伝」1009冊目

やっと読み終わった。この本も面白かった~。サクサク楽しく読めるけど、ページ数でいうと470ページもあるのだ。読後はまるで自分も「ディシュダーシャ(長衣)」と「チャーヒーエ(頭巾)」、「イガール(黒い輪)」を着用してタラーデ(手作りの木の舟)を漕いでいるような気持ち。女なのに。

高野さんの未知のものへの探求心は、幻獣を探していた頃よりなんとなくマイルドになったように感じられるけど、これは単にバブルの頃はどこかからお金が出てきて目的地に長居できて、今はコロナ禍の影響で旅が細切れになったり、世界情勢のために治安統制が厳しめになっていて、幻獣の頃ほど当人たちが追いつめられなくなったからか。

謎の「マーシュアラブ布」は極彩色で、あまりにも自由奔放に繰り広げられる意匠から草間彌生の絵画を思い出してしまうんだけど、見てると元気になる感じがして好きだ。

いま日本にいるイラク人は200人足らずと思われる。(2022年度末で175人、その後増えただろう)知ってる人が一人いるけど、上品で知的な彼は確かにこの本の表紙の恰好が似合いそうだ。どんな気持ちで、同郷の人がわずかしかいない都会で暮らしてるんだろう。この本を見たらいったいどう思うのか、聞いてみたくてたまらないけど生活の邪魔をするのはやめておこう。