高野秀行「間違う力」981冊目

この人の本は全部面白い。ほんとに面白い。この面白さは、ドリフとかひょうきん族とか、バカバカしさの笑い(「ありえない!」)の中で育ってきた人が、どこかにずっと持ち続けて、待ち続けていた面白さじゃないかな?そして、一つ一つ実践して面白くなかった/面白かった、と検証せずにいられない彼は、そんな私たちから見るとギャグマンガの主人公みたいに親しみのわく、身近な”面白いヤツ”。彼の本を読むまで、何十年も忘れてた、子どもの頃のいたずらな気持ちがよみがえってきて、なんともいえず楽しい気分になります。

この本は彼の特定の冒険や特定の分野の挑戦(「語学の天才まで百億光年」みたいに)を取り上げたものではなくて、そんな彼の人生における決断の際のルールに光を当てて具体例を導き出したもの。類似の本を見つけるのは難しいけど、クレージーキャッツの「無責任シリーズ」映画を見たときくらい元気が出ます。開き直れます。

でも著者自身も書いてるように、この本を誰がどういうルートで発見するんだろうか、どこの棚に置いて誰に向けて売るのか?と考えてみると何も思い浮かびません。私が読んだのも、アヘンや納豆の人の他の本だからで、この本を必要としている、悩んでいる社会人に届くのかちょっと心配。ただ、語学という極めて注目度の高い分野でベストセラーが出たので、そっちからやってくる人が今後は多くなるのかもしれません。それでも、この先も一生ずっと、納豆や幻獣、なんならUFOとか財宝とかも探し続けてほしいです。