武田俊太郎「量子コンピュータが本当にわかる!」583冊目

最近少しずつ勉強している量子コンピュータの本。現在開発されている量子コンピュータのハードウェアには、汎用型の「量子ゲート方式」と、実用化されているけど”巡回セールスマン問題”を解くだけの単一マシンである「量子アニーリング方式」があります。この本では「そもそも量子コンピュータとは」にプラスして、量子ゲート方式のハードウェアの4種類について解説しています。

その4方式とは、量子アニーリングマシンでも採用している超電導を使ったもの、イオン方式、半導体方式、光方式。著者が開発を続けているのは最後の光方式だそうです。原子レベルのものを扱うわけなので、厳密な環境管理が必要だし、そこでさらに厳密な計算を行いエラーを減らしていくというのは、現在の人知を超えるほどの作業が必要です。心が折れそうになることもあるだろうなぁ。こういう全く今存在しないものの研究開発って、人材と資金が豊富なところでしかなかなか成功しないと思うけど、現在のコンピュータとは違って少しでも日本の技術が一端を担えるといいですね。

 

E・キューブラー・ロス「「死ぬ瞬間」と死後の生」582冊目

タイトルがものものしい感じもします。人間はみんな根源的に死を恐れる部分があると思いますが、年を取って、「とりあえずみんな、死を恐れるひまがあったらしっかり生きるべき。死は生が終わる瞬間のことで、しかも、気にしたら変わるというもんでもない」と悟ってからは、科学的探究心をもって、死そのものや、死に関する自分の感情を見つめなおすことに非常に興味がでてきました。

「看取り」の講座を受けたときや、カンヌ映画祭で最高賞を受賞した「オール・ザット・ジャズ」という映画を見たときにこの著者の話が出てきていて、ずっと気になっていたのですが、このたび初めて借りてみました。死について自分で生まれてこのかた自分なりに考え続けてきたことが、書いてある。そう感じています。

超常現象とか不思議とかカルトとか、誰かが名付けたことには興味はないけど、自分の中にある感情や感じたことが何なのか知りたい気持ちはあります。霊感が強いほうだとか言われると、幽霊も見えないし言葉が聞こえるわけでもないのに?と思うけど、じゃあ自分が感じたものは何なんだろう?…ちなみに、この本では死期がとても近い人たちのそういう感じのことしか書いてないので、私の感じについて解き明かしてくれるわけじゃないんだけど、まだ全部は解明されてないだけで、そうかやっぱり何かあるんだ、と、救われた気がしました。

自分の中の「黒いウサギ」を発見して、さらけ出さない限り、怒りや憎しみにさいなまれ続ける。そうしないと、自分の中にいるヒットラーを退治することができない。という話がとても印象的です。自分が怒るとき、怒りの対象は本当は相手にはない。…そこまでは気づいていたんだけど、それでも私にはまだ、怒りを抑えることはできていません。

もう少し確信をもって、科学的に、死に向き合えるようになって、そういった理解をもっと広げていきたい。そう思っています。

 

カーヤ・ノーデンゲン「『人間とは何か』はすべて脳が教えてくれる」581冊目

割と難しい本だった。タイトルを見て、「人間とは」というテーマで一冊が語られると思ったらそうではなかった。脳のさまざまな部分がそれぞれどういう人間の活動をつかさどっているかを章ごとに説明した、比較的読みやすい学術書という感じ。

脳のここはこういうことをする、だからそこを損傷した人はこうなる。といった話。

すごく脳に興味があったわけではなくて、ちょっと刺激的で面白い読み物を求めてただけだったので、取り組みが甘かったですね、私。

 

阿部修平「暴落を買え!年収300万円から始める資本家入門」580冊目

タイトルはなんだかセンセーショナルな投機を勧めるように見えますが、実に穏当な貯蓄とバフェット式投資を勧める本でした。

バフェット式投資とは。私が理解しているわずかな部分をいえば、「しっかりしていて将来性のある会社の株を安いときに買え」。そういう株が”暴落”するのは世界景気が一気に後退するときとか、企業に一気に株価が下落するような事件が起こったときくらいじゃないかと思いますが、今がその「世界景気が一気に後退してるとき」というのは事実です。ただそういうときって株価が、会社自体の状態に関わらず投資家の精神状態?によって乱高下するので、企業研究というより心理戦になってくるんじゃないかな。

心理戦を勝ち抜くのに何が必要なのか。投資家の心理を知ること。投資家には機関投資家のほかにあまり企業研究をしないでグラフだけ見て売り買いする気まぐれで神経質な個人投資家層もあるみたい。いい会社に投資したい人にとって、彼らの心理まで読もうとすることって、いったい何の意味があるのか…。でも結局財布の口を開かせるのって、TVコマーシャルの印象だったりするってことですよね。自分なりの勝ち筋を見つけていくのってなかなか大変…。 

暴落を買え!~年収300万円から始める資本家入門~

暴落を買え!~年収300万円から始める資本家入門~

  • 作者:阿部 修平
  • 発売日: 2017/05/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

高橋桐矢「占い師入門」579冊目

会社を辞めたがってる友達が「占い師になりたい」と言ってたのを思い出して、会ったときに上げようと思って「ご自由にお取りください」に置いてあった本をもらってきました。が、読んでみたら予想外に面白かった!そして、すっごくまともな本でした。この本が出た当時は著者いわく「無名の占い師」だったそうですが、占い師の実情を、みょうにスキャンダラスにあおることなく、誠実に書いたほんとに良い本なんですよ。高校生くらいの子のための職業指南書として授業で使っても良さそうなくらい。

基本をきちんと勉強すること、その上で「100%は当たらないという認識をちゃんと持つこと」。タブー(たとえば病気や死期にかかわることは占わない)を厳守すること、などなど。この占い師さんになら自分の運命を相談したいなと思えてしまいます。そういう誠意の積み重ねが大事ってことだなと、身をもって示してくれた感じです。これは何の仕事でも同じかもしれませんが…。

占い師、いいなぁ。。。。いかん、やりかけの通信教育が2つもあるのでそっちが先だ!

占い師入門

占い師入門

 

 

ケン・リュウ「紙の動物園」578冊目

ほとんどがいわゆる未来SFの短編集「母の記憶に」を先に読んでしまったから、というのもあるけど、賞をそうなめにした短編「紙の動物園」に機械もソフトウェアも出てこないのが意外でした。SFの「サイエンス」の部分がなくて、ファンタジックで情緒的な美しい作品。民話、昔話のたぐいといってもいいんじゃないかな?

もののあはれ」も、日本人ってこんなに素晴らしい民族だっけと照れるくらい、しっとりとした味わいのある、しかし宇宙SF。

この2編をはじめとする名作揃いでした。ほんとに原題中国系SF作家、というかあの3人はすごい。人間への深い洞察、愛と憎しみへの理解と共感、現存するテクノロジーと開発されつつある未来のテクノロジーの把握がすごく高いレベルにあって、驚きます。彼ら相当知能指数が高くて作家じゃなくても一流の仕事ができる人たちですね。日本のそういう人たちは何をしてるんだろう?過去に傷ついたことの自己憐憫におぼれる中二作品(そういうのも実は好きでかなり読んだり映画見たりしてるけどさ)のまま、終わりそうになってないか?

ロシアや南米の「辺境」の作品の面白さにしばらく夢中になってたけど、在外チャイニーズもある意味、作家として注目されてこなかった辺境の人たちなのかも。まだまだ夢中になって読んでいきたいと思います。

しかし、それに匹敵するレベルの映画作品はあまり見ない気がするな。すごい人が出てきてくれたらいいのに。 

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
 

 

チャディー・メン・タン「JOY オンデマンド」577冊目

マインドフルネスについて何冊か読んでるんだけど、瞑想を「ジョイ・オン・デマンド」って表現するのって軽くて面白い。深遠で難しそうな顔をしなくてもいい、瞑想を楽しんでいいんだよ、っていう著者の意図が伝わってきます。

瞑想はインドの昔の知恵だと思ってたけど、この本では仏教由来のものとして(あるいは仏教が興ったあとでどう瞑想が用いられてきたか)語られます。

簡単そうに見えるこの本ですが、著者は探求心が強くてどんどん仏教聖典をさかのぼっていき、日本の本もインドの本も、もう広く深く学んでいきます。真面目に読んでると、ああやっぱり瞑想って難しいんだ、深いんだ…としり込みしてしまいそうですが、実際はやってみて楽しさを知ることが大事なんでしょうね。もっともっと先に行きたくなるかどうかは、それぞれの人で違うし、違っていい。

しかし、こういう「マインドフルネスとは」ばかり読んでてもできるようにはならないので、入口のHow to本も読んでみよう。 

たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND

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