クリスティー・シェン&ブライス・リャン「FIRE 最強の早期リタイア術」822冊目

この本、読もう読もうとかなり昔から思ってたけど、読まないうちに早期リタイアしてしまって、お金の算段もついてないというありさま。今さらながら読んでみました。

私が育った家は、贅沢はできないけど普段の生活に困ることはなかったので、著者が経験してきたような困窮は経験せずにきたけど、「お金に対する欠乏マインド」は、ふしぎとある。これは多分、母親がいつもお金がないからxxは無理、そんな高いもの無理。もったいない、お金がない。・・・ってなことを言ってたからだな。だから私は大きくなって自分でお金を稼げるようになろうと思ったものでした。おおらかな大人にはなれなかったけど、おかげで贅沢癖はつかなかった。たまに豪華なレストランとか行くと、勿体ない気がしてしまう。だから私の金銭感覚はこの人たちに近いと思う。

あとは、どうやって老後まで持たせるか・・・。簡単に計算してみたら顔が青ざめた。物価の安いところに移住することも、もっと真剣に運用して増やすことも、考えないと。あんまり長生きってしたくないなぁ・・・。

 

マグナス・ミルズ「鑑識レコード倶楽部」821冊目

タイトルにぐっときて即借り。でも予想とまったく違う本だった。

予想:音楽評論家が名探偵で、スコットランド・ヤードから呼ばれると(殺人現場に落ちてたCDがどこの国の何てレコード会社から出た盤か、どこでやったライブのブートレグか、等々)駆けつけてマニアックな知識と人脈で謎を解いていく

現実:音楽好きの男たちが、いきつけのパブの奥の部屋で毎週水曜日に「何も批評もコメントも説明もせずに、ただ持ち寄ったシングルレコードを交代で3枚ずつかける」という趣旨で「鑑識レコード倶楽部」というイベントを行うおはなし。オチも山場もない

この読後感、なんて言えばいいんだろう・・・嫌いじゃない、むしろ好き・・・ブレイディみかこさんの本やケン・ローチの映画に出てくるロンドン郊外のワーキング・クラスの男たちが、そのパブでたむろしてるようで。もっと遡ると、私は昭和後期のスカ・ブームのときの「マッドネス」とか大好きで、今でもなぜかファンクラブのメルマガを購読してるのだが、そういう私好みの世界がそこにあります。作者自身、この本を書いた時点ではバスの運転手だったらしい。(翻訳者柴田元幸が会ったときは配達の仕事をしてたと書いてある)

権威もなにもないのに、好きなことになると妙にうるさかったり。

でもこのお話は結局;

そのパブの店員の女の子が駆け出しのミュージシャンで、「このデモ盤をみんなにも聞いてほしいんだけど、恥ずかしいから、いいとか悪いとか一切感想を言ってほしくないの」クラブを立ち上げた男がそのカレシで、「わかった。俺に任せとけ」と言ったものの、似て非なる他のクラブがどんどん立ち上がってしまって後に引けなくなってしまった。カレシの友人の、おひとよしの音楽好きであるところの主人公が、それに巻き込まれて、事情を察しないで右往左往している。

というストーリーなんじゃないですか?

面白いのは、作者本人がこの本に多数出てくる楽曲をSpotifyでオフィシャル・プレイリストとして公開してるところ。時代ですわ・・・。(英語の原題と日本語の直訳と、歌詞の一部の要約だけ載せるぶんには、JASRACはお金を取りにこないのか。本のどこを見てもJASRAC許諾番号というやつが書いてない)

シカゴからは大ヒットしたメロウな「愛ある別れ(If you leave me now)」だけじゃなくバンド名に「トランジット・オーソリティ」が付いてたブラス・ロック全盛期の、テリー・キャスがボーカルの「I'm a man」も入ってるのがいい。

ダムドの「スマッシュ・イット・アップ」とか「アナザー・ガール・アナザー・プラネット」とか入ってるあたり、UKだよなー(パブに入りびたってパイントでギネス飲みまくってる時点でUK以外の何物でもない)。

アメリカのバンドもシカゴ以外にニルヴァーナ「Come as you are」とかスパークス「This Town」、ステッペンウルフ「Born to be wild」など多数。全体にやたらThe Whoが多いのもなんか嬉しい。

ああロンドン行きたい。(もうそれしか言うことはない)

鑑識レコード倶楽部

鑑識レコード倶楽部

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「地球の歩き方BOOKS・世界197ヵ国のふしぎな聖地&パワースポット」820冊目

とにかくコンテンツの多い本。

エジプトのギザのピラミッド、アメリカのセドナギリシャパルテノン神殿、メキシコのテオティワカンカンボジアアンコールワットバチカン、スペインのサグラダ・ファミリアブータンのタクツァン僧院、イギリスのストーンヘンジ。国内では出雲大社、熊野、屋久島。・・・旅行が生きがいの私が冒頭特集の中で行ったのはこれだけだけど、この本のごく一部で、その後のページで197ヵ国の膨大な数のパワースポットが紹介されます。

・・・パワースポットってなんだっけ?上に挙げた具体的なものは、「観光名所」だと思っていたものが多い。パワースポットと聞いてたのはセドナとピラミッドくらいかな。ただ、バチカンサグラダ・ファミリア、あるいはここに出てない国内の神社仏閣のような宗教施設に行ったときに感じた、なんともいえない清らかさ、心も体も洗われて毒が流れ出ていくような感じ。「デトックス」とはこのことですね。そういうものを感じられるのがパワースポットなのだとしたら、私はまだ、人の祈りが集まる場所でしかパワーを感じたことがないかもしれない。大昔にピラミッドの奥の部屋で写真を撮ったら、おかしな歪みがあって、「ピラミッドパワーだ!」と騒いだけど、セドナでもほかの場所でも、残念ながら何も感じなかった。とか言って、いつかまた行けたら、自分の方の状態によって、違う受け取り方になるのかもね。

なにかのマニュアルとかガイドブックとして使うというより、なかなか旅行できないこの時期に、パラパラとこの本を見て、「すごいなぁ、いつか行きたいなぁ」と思うのに最適な夢の本なのでした。

 

さかなクン「さかなクンの一魚一会」819冊目

いい本だった。好きなこと以外は苦手で、勉強にもなかなか身が入らなくてもいいのだ。好きこそものの上手なれ。のびのびと育った明るくて優しいさかなクンを見ていると、この本が育児の参考書にもなるんじゃないかって気がしてきます。(すみません、子育てをしたことはないので、想像で書きました)

あんなに繊細な彼が、愛する魚たちを調理して食べるうえで悩んだことはなかったのかなと思ったりしてたので、タコの死やウマヅラハギの美味を知ったときのショックを書いたページを読んで「ああ・・・やっぱり・・・」。命をいただくことは辛いこともあるけど、感謝して食べることも大事ですよね。

この本を原作とした映画が今年の秋に公開だそうです。さかなクンを演じるのは、なんと、のん。不思議と適役な気もします。見るのが楽しみ!

 

「地球の歩き方BOOKS・地球の果ての歩き方」818冊目

これはまた、旅したい心をくすぐる、各大陸の端っこをぐるりと回る本。大陸の端っこだけじゃなくて、エクストリームな気候(酷暑や厳寒、突風や極度乾燥)の土地や最高峰や地底まで。年をとってから都会より地の果てを目指すようになった自分には、眺めているだけで胸がワクワクしてくる素敵な本です。

行ったところは少ないけど国内の青森、端島軍艦島)アフリカの喜望峰アイスランドのブルーアイスケイブ、という4つだけ。載っているところはどこも惹かれるけど、近くてとても遠いアリューシャン列島に特に行ってみたいな・・・。南端はロシアで北海道から近いけど、国後・択捉を経てカムチャッカ半島より先。現実的にはアラスカ経緯由でアメリカの領土を目指す方が楽そうだけど、だいぶ遠回りだ。数年前なら世界のあらゆるところに直行便を飛ばして楽に行けるツアーに行けたりしてたけど、当分は無理か・・・。

やっぱり今年は初志貫徹して、国内の世界遺産などから回るのを続けますかね。。。

 

岸政彦「はじめての沖縄」817冊目

このタイトルで、旅行ガイドだと思って読む人がいるんだろうな(笑)。本屋の店頭なら、売り場でわかるだろうけど、私みたいに図書館で借りる人は、タイトルくらいしか情報がないから。間違って読む人を意図したタイトルなのかな?

感想をいうと、私自身の中にもある沖縄への憧れと愛と不安と怖さ、いろいろな事情や背景をすごく丁寧に解きほぐしてくれていると思います。一人の人間を見ても(自分を含めて)、やさしさと乱暴さと良さと悪さ、賢さと愚かさ、さまざまなものが入り組んで生き物みたいに組成を常に変化させている。沖縄は地球上の他のすべての部分と同様、楽園ではなく地獄でもない。楽園でもあり地獄でもある。心の中がいつも複雑で、沖縄に行くとき、特に地元の人と話すときは、少し緊張する。

私も泣いたことがある。ある島に東京から行って長く住んでいた人のツテで、大勢でそこを訪れたとき、町の「結」の飲み会に招いていただいて、みなさんの明るさとやさしさに胸がいっぱいになって、帰り際にみんなで泣いた。あのときのことは一生忘れないだろうな。(としか言えない)

どこの国の人たち、どこの地域の人たちとも、境界線を意識しながら手を伸ばし合うということは共通してる。フルタイムの仕事を辞めて以来、本を読んだり映画を見たりする時間はたっぷりあるけど、他人と境界線を意識しながらじっくり話し込む夜はない。私が欲しいのはそういう時間だけなんだけど、外資系企業に再就職しなくてもそういう場を持てる機会って作れないかな・・・。

 

角幡唯介「空白の五マイル」816冊目

同じタイトルでこれがミステリーだったら、苦労を重ねて命を危険にさらしながら「空白の五マイル」の全エリアを最初に踏破した冒険者が、最後に桃源郷のような光景を目の当たりにするような絶頂感を味わって終わるのでしょう。最近気軽にミステリーも何冊か読んでるので、なんとなくそういう「スカッとする感じ」をイメージしながら読んでしまいました。

現実は「苦行」…もちろんご本人には、究極まで自分を追い込む高揚感や達成感があるわけで、のんびり暮らしてる私には想像もつかないような高みに達しているのでしょう。死が常にほんの5歩先で待ち構えているような緊張感に圧倒されました。

そして、読み通してもスカッとする場面はどこにもありません。現地のようす、彼の「到達地点」を伝える写真は、何が写っているかわかりづらい巻頭の1枚だけ。著者の大学の先輩にあたる学生が、テレビの取材で現地へ行って事故にあったことが本の中ほどまで詳しく書かれていて、探検の過酷さばかりが印象に残ります。

探検家という仕事・・・って何なんだろう。究極の、目先の利益から最も遠い”遊び”のような気もします。逆に、小さな山に一人で入って歩き回ることも、私なら十分に「探検」。怖いし経験の浅い自分の場合危険もある。でも多分驚きもある。高尾山に登ることも、ツアーでアフリカに行くことも、私にとっては冒険だった。新しい仕事を始めるのもすごく勇気が必要だった。安全領域の大きさや範囲、挑戦可能な領域の大きさや範囲、その外にある不可能地域・・・それぞれの大きさは人によって違う。この著者は地球のほとんどが「挑戦可能領域」で、「不可能地域」は政治的・物理的に人間には到達不可能なところだけなんじゃないだろうか。求め続けることは欲望に忠実に生きることだけど、それを「生命力」って呼ぶのかもしれません。それが生きるエネルギー。人間って、食べるものやいろいろなものからの影響を受けても、自分の内側から出てくるそういうパワーが根源の活力なのかもしれない、と最近思うんですよね・・・。