G.ガルシア・マルケス「百年の孤独」308冊目

二段組み300ページの長編ですが、2日で読了。

タイトルから想像した“禅の世界”的な静けさのない、うるさいくらい賑やかな小説で、一族の男たち女たちが欲張ったり攻撃したり意気消沈したり、煩悩の限りを尽くすのが面白くて、ずんずん読めます。

初心者としては、先に「予告された殺人の記録」を読んでよかったです。

描かれている世界はこちらのほうが時間軸もテリトリーも登場人物の数も膨大で、神がかった奇跡もこちらのほうが大規模です。視点がとても高いところにあり、殺し合い、欲張って大事なものを失ってばかりいる人間たちの愚かさを、否定も肯定もしません。が、天真爛漫な少女だけは“透き通って天に昇っていった”。インセスト・タブーを犯した二人の間に生まれた子どもには“豚の尻尾がついている”。でもあらかじめ注意したところで、人はやはり過ちを起こして、栄えて滅びる。という、ひとつの激しい一族の栄枯衰勢の物語。

同じ名前の人たちが大勢出てくるので、誰が誰だかすぐ混乱してしまいますが、多分べつに混乱しながら読んでも良いのだと思います。(どうせ繰り返すんだから)この一族の物語を書いた人がいて、また別の一族のことを書いた人がどこかにいるかもしれない。他の国の他の一族は少し違うだろうけど、結局のところ同じようなものなのかもしれない。

すべてがあらかじめ書かれているという運命論的なところや、最後は崩れ落ちてなくなってしまうという悲観的なところが、唯一他に読んだことのある南米作家のボルヘスと似てるんだけど、その意味するところは??

この小説も、とても面白く読めたし壮大で深淵な感覚をもたらしてくれたけど、短い分細部まで見渡しやすい「予告された…」の方が自分としては押しです。