ブレードランナー等の映画のベースとなったと言われている「1984年」などを書いた作家のジョージ・オーウェルは、実は若い頃パリとロンドンで困窮の限りを尽くした底辺生活をしていました。そのときの生活を詳細につづったドキュメンタリー作品です。
とにかく面白い。今はどうなっているのかわかりませんが、1927年、日本は昭和になったばかりのこの時代のパリとロンドンには、ホームレスの若い人があふれていて、政府の対策は後手後手です。これって戦争と戦争の谷間だからかな。レストランの厨房は狭くてきわめて不潔。今はもっと清潔担っていると思いますが、それにしてもすごい。
バックパッカーの宿みたいなのじゃなくて、救貧院とか救世軍とか。「放浪記」ではあるけど旅行記ではなく、できるだけ長く一つのところに滞在してちゃんと仕事に就こうとしています。レストランのヒエラルキーのかなり下のほうにある皿洗いの仕事につくのも相当な苦労です。着るものも次々に質入れして、シケモクを拾い、お金を拾い、単発の仕事につき、17時間労働に耐えて・・・
でも悲惨さを感じさせない、巧みで生き生きとした語り口。この人が語れば、どんな事実も面白くなるんじゃない?登場する人たちは教養がない人が多いけど、個性的で根拠のない自信にあふれていて、こちらまでなんだか明るい気持ちになります。
同じような状況でも、ロンドンのほうがパリより若干清潔だったみたいですが、日本はそれよりもっと清潔・・・と思いたいなぁ。