村田喜代子「人の樹」688冊目

敬愛する村田喜代子の本、しばらく追っかけていなかったうちにたくさん出版されてました。順次、読んでいきます。

この本は、かなり異色。タイトル通りともいえるのですが、1つ1つの短編で、樹木を人格のあるもののように描いています。たとえば「あたしはニーム。センダン科の木でハーブの一種よ」。現存する作家のなかで随一の想像力をもつと私は思っていますが、林が夜は歩くとか、人間の姿になって世話になった人の葬儀に出るとか、死んだ虫たちが樹皮にしばらくとりついているとか、なんだか不思議で豊かな世界です。

すごく地味で小さな作品集だけど、里山とふもとの村をまるごと包み込むような、時空を超えた温かさがあって。

でも私は、女の子の一人称より、昔話のような口調で物語を語るときが一番好きかも。

人の樹

人の樹