アガサ・クリスティ「未完の肖像」835冊目

「春にして君を離れ」に続いて読んだ”メアリ・ウェストマコット”名義の小説。

重かったなぁ。若くて純真な女性の一途さが傷つくと、きっと誰しもこんな経緯をたどるんだろうと思う。そこから枝分かれして、人を赦せるようになったり、人をもっとよく知るようになったり、自分を責め続けたり、相手を憎むだけの人生を送ったり。アガサは賢明な自分の母と祖母を思い返すことで、人をもっとよく理解するようになり、それ以降の小説を書いていった・・・と想像してみる。この小説に書かれたシーリアを著者と同一視しすぎてはいけないとわかってるけど。

世の中には、人にも物にも愛着を持ち続ける人と、そのときの衝動で簡単に頭を切り替えられる人がいる。いじめや犯罪を起こしても自分が正しいと信じて疑わないという心情を保てる人に、悪いことだと納得させるのは難しいのだ。

自分も若いころはずいぶんいろんなものに執着してしまった。今もそういうところがあるかもしれない。でも、ある程度手放さないと生きていけないし、手放せるようになってきたと思ってる。それでもこの小説を読むと、自分を主人公シーリアに重ねて、降りかかった不幸や自分を傷つけた人のことを思い出してしまうのは、まだまだ成長しきれてないってことなんだろうな・・・。

あと4冊、メアリ・ウェストマコットの小説をまだ読んでないけど、なかなかの重さなのでちょっと間を空けよう・・・・。