一穂ミチ「ツミデミック」1056冊目

Audibleに入荷したので早速聴きました。

コロナ禍の人々の暗い気持ちが散りばめられた短篇集。こっちの方が「スモールワールズ」より罪が深いというか、重いものが多い感触で、途中ちょっと緊張しました。

「違う羽根の鳥」似たような若い女の子が二人写った「プリクラ」を持っている若い男に、派手な若い女が近づいてくる。誰が生きていて、誰が死んでしまったのか?どちらであってもちょっと切ない作品です。

「ロマンス☆」これは痛いなぁ。”推し”は手の届かないところにいるのが一番、その方が誰にとっても安全…。

「燐光」これも重めの一篇。主人公があまり執着しない人だったことになんとか救われる。

特別縁故者」これは、どきどきしながら聴きました。主人公の中年男には悪気がある。悪気がある人がそのまま犯行に及んだり、遂行しないまでもその邪心のゆえに事件に巻き込まれて道を誤る、という作品は、他の作家ではある話だけど、あまり重いのはなぁ、と思っていたら、わりとほっとする結末でよかったです。

「祝福の家」この人の作品には、誰かが妊娠して子どもが生まれてくる話が多いな。妊娠出産は不安だし危険も多いし、出生の秘密は思いもよらないところに隠れている。ミステリーとしては、意外かつ納得感のある結末だったように思います。が、白い両手の本当の持ち主はもしかして…。

「さざなみドライブ」これも、こうあってくれたらなという物語です。生き続けることって本当に大変だけどね…。

次は何を書くのかなと思ったら、今月末に新作が出るらしい。読まなきゃ…。