デビッド・ヴァイス「Google誕生」22

最近MSとかGoogleとかの関連の本を読むことが多い。だっておもしろいんだもん。

原題は「Google Story」。そのままでよかったんじゃない?という気もする。

Google関連では「ザ・サーチ」という本が有名ですが、今回はワシントンポストの記者が書いた本です。

USのジャーナリストの中には、特定の会社をピンポイントで追い続けてすっかり詳しくなってる人がいるようです。MSに関しては、シアトルタイムズのBrier Dudleyって記者が4月にBillGのstepping downをやけに正確に予想してました。2003年にBaby Billsっていう、後にあちこちで引用された記事を書いたBusiness 2.0って雑誌の記者Eric Schonfeldも、その後のフォロー記事をずっと書いてるようです。Microsoft Watchをほとんど1人でやっているMary Jo Foleyは言うに及ばず。

で、この本なんですが。本気でGoogleだけが世界を変えたと思ってるのかな。インターネットの検索はかなり昔からあって、ユーザーはみな、かなりの恩恵を受けてきました。Googleはすごいエンジンを提供してくれて嬉しいけど、世界を完全に変えたわけではありません。彼らが変えたのはユーザーの意識(「Googleなら自分の求める結果が得られるに違いない」)と検索に関わるビジネスの利益構造と、検索ビジネスの業界地図、だと思う。で、広がりつつあるのが、検索できるもの。でしょ?違うの?

この著者Googleを持ち上げすぎ。「最高の」「熟知して」「熱意あふれる」「技術革新に一心に力を注いできた」・・・etc。一方、「冷酷な戦闘員である億万長者のビル・ゲイツ(p24)」とも書いてある。頭悪そうに見えるから、こういう表現使わなければいいのに。あとがきを読んだら、Google関係者にかなりインタビューしてるみたいだ。きっと気を使ってもちあげて書いてるのに違いない。

さてp74。あらゆるポータルサイトに自分たちのサーチエンジンを売りに行ったのにどこにも買ってもらえず、自力で開発を決意したが、先立つものがない。そこでエンジェルが現れて資金を援助してくれるくだりです。エンジェルねぇ。技術でもうけるつもりがなかった彼らが、広告課金モデルを考えなければならなくなったり、上場せざるを得なくなったのは、ここで資金援助を受けてしまったからだよね。これは本当に成功だったの?Googleって人たちのポリシーからみて。

研究室「ゲイツ360号室(ビルゲイツがたくさんお金を寄付したので、そんな名前のついた建物があった)」で考えたアイデアなのに、MSには売りにいかなかったのね。最初からMS嫌いだったんだっけ、この人たち。すでにお金を持ってる会社は、もう上場の心配や、サーチで儲ける心配なんてしなくていいのに・・・でもきっと、そうすると、すでに世界を征服してる人の一部になっちゃうような気持ちはあったかもしれないね。ラリアンサーゲイは、自分たちで世界を手にしたいんだから。

文中しきりに「Googleは純粋に検索のテクノロジーだけを追及していて、もうけようなんて思ってない」って言ってほめるんだけど、みんなお金欲しくないの?どうしてお金もちになろうとしてがんばってる人じゃなくて、もうけようと思ってない人の方をよく言うんだろうね。自分の会社がいい技術を持ってるのにそれでお金をつくる方法がわからないっていう状態で、ボーナスも出なかったら、嫌じゃないの?私なんかは家が貧乏で病院に行くタクシー代もキツキツだったから、自分が生活できるくらいのお金を稼ぐことはとっても大事だし、労働の対価ってのは尊いものだとか思っちゃうんだけどね・・・。p95 ペイジ自身が、自分たちのお金は技術開発の後に勝手についてきたものだと語ってる。貧乏志向は美しいのかな。(スタンフォードの博士課程まで行ける坊ちゃんたちに対して、ちょっと皮肉)

p84でサーゲイはムーアの法則に触れている。ムーアの法則のおかげで、スーパーコンピュータでなくPCでサーチのためのデータベースが作れると。で、技術が法則に忠実に進歩してきたことも認識してる。だから、Googleのデータベースの拡張はきっと、かなり計画的に行われてきたんだろうね。正確には、Webページ量の増大はCPUの早さじゃなくてPCの台数やユーザー側の意識の変化に比例するんじゃないかと思うけど。

p104 投資家モーリッツ「インターネットの便利なアプリは電子メールと検索。Googleは検索という、ユーザーを引き寄せる罠どこよりも高性能に作り上げていた」そうだね。・・・でも最近はサーチしない日でもmixiは読んでる。Mixiってひょっとして世界で一番盛り上がってるSNSなんじゃないの?って気がするんだけど、どう?

「バーニング・マン」っていうヒッピー村疑似体験みたいなのが第6章で取り上げられてる。そこでは金銭は何の意味ももたない、んだって。欧米人ってこういうの好きだよね。ザ・ビーチって映画も然り。そんなにGrateful Deadがいいのか。そんなにWoodstockに戻りたいのか。Googleplexの中では、食べ物も無料、美容室もランドリーも歯医者も・・・ ・・・ってClub Medかい。でなければみんな本当はコミュニスト?なんか、それと仕事を結びつけるってのがちょっと変なんだ。コストもばかにならない。彼らが2人とも子持ちになって、家庭生活が楽しくなると、こういうのも変わってくるはずだし。

p212 Google Newsについて作者が、「出所を明示してニュースを表示しているので、元にサイトに断る必要はなかった」と言い切ってるけど、そうだっけ!?

p229 Googleもかなり古いウェブページをキャッシュで持ってるけど、NPOのInternet Archivesが提供しているWayback macihneってサイトでは1996年以降のネット上のページを全部貯蔵している、らしい。本当かな。

あったここだ

試しに私が持っている某サイトで「Take me back」してみると・・・うわ!2001年から2005年まで記録されてる。うわー!いっちばん最初のトップページはないけど、2番目のトップのデザインはretrieveできるんだ。びっくり。

Googleの最終形として目指してるものは、世界のすべてを自分たちのサーバー上に載せること?

それはどうであれ、情報の選別の部分、つまりアスクジーブスを自動にすることとか、を発展させると、人間のあたまの中の、メモリと選択の部分はこれでまかなえちゃうんだよな。コンピュータサイエンスのひとつの究極の目標が「人間と同じものを作ること」だとしたら、Googleの技術は人工人間の頭のどっかに確実に入ると思う。そこがすごいんだよ。ただ、それで全てではないし、まだまだこれくらいでは人間の頭の一部に近づいてすらいない、ってことは認識しておいたほうがいいと思う。

そんなGoogleの野望の一部:

P351- ミシガン大、スタンフォード、ハーバード、オクスフォードのボドリーライブラリ、ニューヨーク公立図書館の図書館まるごとスキャンプロジェクト、2004年12月に発表。(p364 Amazonは2003年4月ごろからすでになか見!検索の英語版。)

P430 Googleが個人の遺伝子情報全部解説することに取り組んでるとかいてある。

P433 科学研究・・・グリッドを使って、生物学や医療にも入り込んでいくらしい。

こういうのを読んで、「やばい、奴らに日本も牛耳られてしまう!」と焦った日本の偉い人たちが、何を読み違えたか、国産サーチエンジンを開発しようと思ったかな。問題はエンジンじゃなくてデータの方じゃないのかな。すばらしいサーチエンジンってのも、1000開発されたうちほとんど淘汰されて残ったうちの1つがGoogleなんだから、自分たちが開発する1/1000が確実に生き残ると想定して国が金を出して1つだけ作るってのは、種の法則に反していておろかだと思う。

P323 ラリアンサーゲイは『実践的な経営者でアグレッシブなビジネスマンでもある』→この2人はGoogleを永遠に2人でやっていこうとしてる。一方MSはとうの昔から「みんなのもの」だ。てかオタクなエンジニアじゃなくて、MBALCAが強すぎるから強硬なやり方が社内で通ってきたのでは?

P384 Google vs MS本当のたたかいは「どっちが優秀なスタッフを確保できるか」。なにをもって優秀なスタッフって言うのかが知りたい。「Google Labs Aptitude Test」が解けるような人?あれって数学パズルしかないんだけど、多分コミュニケーション能力とか国語能力とかも必要だと思うよ。Googleはそこが欠けてて、記者会見のスライドでうっかり社内情報をもらしちゃうようなところが改善の余地ありだ。

・・・と、今日もとりとめなく長々と書いてしまいましたが、これで半分くらい。また別途まとめて書くかもです。

こういうネタって面白くてつい、いろいろ考えちゃうね。