高柳和江「死に方のコツ」26

ビジネス書は一回休み。

この本のタイトル、私が書くと「完全自殺マニュアル」系?と疑われそうですが、ぜんぜん違います。著者は日本医科大学助教授、お医者さんです。ものすごく含蓄の深い本なのですが、ひとことで言うと、人は死ぬときどうなるか、肉体的にも精神的にも、わかっている範囲で説明し、人は必ずみんな死ぬのだから死を恐れずに生きられるだけ生ききりましょう、とアドバイスするというのがこの本の趣旨です。

なんで私がそういう本を読むかというと、とある会でこの先生の講演手配を手伝ったからです。本当は、絵門ゆう子さん、以前NHKのアナウンサーだった池田裕子さんです、彼女と高柳さんとの対談のはずだったのですが、直前に絵門さんが亡くなったので、高柳さんだけに講演をお願いしました。

絵門さんも体のあちこちをガンにおかされながら、精一杯楽しみぬいた人です。高柳さんは、そういう生き方をサポートし、いまの医療の冷たさや誤解をはっきりと指摘します。ああいう世界はきっとヒエラルキーが固まってて、その中であれほど明確に批判的なことを言い続けるのは、大変な勇気だと思う。講演でもそんなお話をしてくださいました。春の新芽のような薄いグリーンのスーツにストールを肩から斜め掛けし、ミニスカートにピンヒールで、スライドを映し出した舞台を自分が歩き回って講演します。なんだかすごい人が来たなぁと思ったのですが、クウェートで死んでいった子供たちや、ホスピスで会ったガン患者の方々との出会いによって、彼女が自分で直接知るようになったいろいろな大切なことを、誰にでもよくわかるように話してくれました。「患者患者って、ひとくくりに言うのはやめてください!」と、医学生のワークショップに呼ばれた絵門さんが言うと、その場がしーんと静まり返りました。人を研究対象としてしか見られなくなっていたことに気づかされた・・・ワークショップ終了後、学生たちが絵門さんを囲んで口々に感想を言い合ったのだそうです。そんなエピソードも話してくれました。

私はどうか?というと、小さい頃は病弱で、なんとなく長くは生きないと自分で思ってたので、死ぬことは怖くなかった。病気なのも、そういうものかと思ってました。小さい子供が病気だとかわいそうだと感じるのは、大人のサガなんだなぁ、と。でも、成長するにつれて、だんだん死ぬことが惜しく思えるようになってきました。今は自分に近い人たちの死を経て、人が死ぬということを重く受け止められなくなってきています。いなくなった気がしなくて。人はすこしずつそうやってまた、来るべき死というものの準備をすこーしずつ、進めていくのかなぁ。

とにかくこの本は、元気なうちに一度読んだ方がいいです!