暗黙知、形式知という言葉がよく経営関係のコンテクストで出てきますが、暗黙知ってのは数字にしにくい金型の微妙な調整具合のことだけをいう言葉ではありません。Wikiが正しいとすれば、暗黙知=Tacit knowledgeという言葉を最初に使ったのは、このハンガリーの学者らしい。
用語ですから、最初にその言葉を使った人の意図を知っても、それにこだわるよりは、汎用的に現在使われている意味で使った方がいいとも思うけど、この本を買ったのは興味があったから。
”われわれが考える知以外に、もうひとつの知がある。言語的・分析的な知に対する非言語的・包括的な知、それが本書でいう「暗黙の知」である。”と、定義はとても広い。五感のすべてって感じです。経験価値マーケティングのタネになるエクスペリエンスとも通じます。
哲学的な、思想の本です。「科学思想家」と、まえがきには書いてあります。アメリカ人の書いた統計的な経営分析の本や、日本の経営者が書いた現実的な本とはぜんぜん違う趣の、思索して思索して思索する本。こんなに考えたら脳みその筋肉が鍛えられそうなくらいです。いくら読んでも難しいけど、わからないというわけでもない。うーむ・・・はっ、なるほど、・・・えーと・・・ああ、わかった。そんな感じで読み進んでいきます。
知の楽しみっていうんでしょうか。Advanced Readerというか、大人の読書家にはお勧めです。じっくりと読んでいくうちに、自分の思考の進め方のクセや強引な部分にすこーし気づかされる、かもしれません。
この本の元となった講義が行われたのは1962年。でも古さを感じさせません。普遍的な真理について、深くふかーく沈み込んで恍惚としてみてください。