黒澤明監督「酔いどれ天使」308

1948年作品。

勢いのある若いヤクザが結核でもう長くないことを知る。女に逃げられ、最後まで守ってくれると思っていた兄貴分に裏切られたとき、彼は自分を救おうとしてくれた町医者のために・・・。

素晴らしき日曜日」が1947年、「野良犬」が1949年なので、ちょうどその間に作られた作品です。三船敏郎が素敵に汚れてます。志村喬はまだなんとなく若々しさを感じさせます。

岡田との戦いの最後に、廊下から物干し場に出る戸を開け放ったときの絵が美しいです。すごくワザトらしいんだけど、感動的だからいいの。って感じ。それから、三船なき後の後日談的な部分が長いですね。ヤクザなんかいかん、(更正できないんだからヤクザになってはいかん)という修身的なお説教が、この頃作る映画には求められていたのかもしれません。なんにしろ、劇画調ですね、黒澤映画って。適度+αのちょっと過剰なエンターテイメント性があるので、流してだらだら見ていてもハッとしてつい見させる効果があります。

このときの三船が良かったので、彼はその後の黒澤映画をしょって立つことになったらしい。この映画の中に挿入される笠置シヅ子「ジャングル・ブギ」も印象的ですね。歌もうまいけどショーマンシップが素晴らしい。アメリカ人向けの舞台で大人気を博したサンバ歌手カルメンミランダをホウフツとさせます。彼女が出た映画があったな、と思って調べてみたら「Gang's All Here」って映画が1943年に公開されてます。笠置シヅ子とほぼ同時代の人だけど、アメリカでの活躍が同時に日本に入ってくるという時代でもないはずなので、どれくらい日本の歌手が影響を受けたかはこれだけではわからないですね・・・。

今日の名言:「仁義なんてのは、悪党同士の安全保障条約みたいなもんだ」by町医者