西條奈加「心淋し川」704冊目

こころさびしがわ、じゃなくて、うらさびしがわ、って読むの?(表紙を見ながら)

江戸のうらぶれた下町の片隅に、貧しくつつましく暮らす人たちの群像劇です。なんとなく、目新しさはなくて、前に他の人の書いた似た小説を呼んだような気もするけど、落ち着いた筆力でじっくり安心して読めて、確実に面白い。「いい人」ばかりじゃなかったり、お妾さんを4人も住まわせている家のことも書いたりしているところが、少し挑戦的なのかもしれない。こういう作品って本好きの人たちに愛されながらも”専門家”の目に留まりにくいんじゃないかと感じるけど、直木賞を受賞したということは、普通の人の感覚がちゃんと評価につながっているようでほっとします。

どういう評価で受賞したんだろう?と思ってググって一部だけど選評を見てみたら、やっぱりこの堅実さを強く推す人と、決めてが弱いと考える人がいた。

私はこの人の、ファンタジーノベル大賞を受賞したというデビュー作「金春屋ゴメス」が、タイトルからして気になる。ポルトガル人か?これも読んでみよう。