尾崎世界観「母影」749冊目

著者がやっているクリープハイプというバンドのことは、聞いたことあるかも?くらいしか知らない。インタビュー番組で見た彼が面白くて、先に本を読んでみることにしました。彼がむかし働いていた製本所で作られたきれいな本。

感想は、とても面白かった。起承転結はあまりない。ちょっと読んでてうるさく感じるくらい、小学生のちいさな女の子の強く豊かな感受性がカラフルに展開する。”よい”ことも”悪い”ことも、”きれいな”ことも”きたない”ことも、すべてをフラットに感じる彼女の環境は、大人の目で見るとなかなか厳しい。シングルマザーの母親はマッサージ師だけど、怪しいサービスもさせられていて、そのことを同級生も先生も知っている。同級生の父親もそのサービスを受けに通ってくる。

この女の子が大人の客観的な視点を持ってしまって、自分を低く思う日がいつか来るのかな。ずっと今のまま、ひょうひょうとしていてほしい気もするけど、そうすると外からの同調圧力がすごいことになりそうだしなぁ。

お腹いっぱいにはならない作品だったし、デビュー作は自伝的と書かれてるくらいだから男目線なんだろうし、もう少し追っかけてみたいなと思います。

母影

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