2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

岸俊彦・編「東京の生活史」847冊目

この人の本は何冊か読んでとても好きなんだけど、読むと、とてつもなく切ない気持ちになることがある。自分が見ないようにしている自分の暗さを思い出して、空騒ぎして自分で自分をなんとか楽しませようとしてる自分がむなしくなってくる。 この本でも、東京…

村田喜代子「飛族」846冊目

<ストーリーや結末に触れています> この人の本を読むのは久しぶり。好きな作家のひとりだけど、評価が確固としている分、いつでも入手できるので、つい後回しにしてしまう。 最近の小説には、老婆か初老の女性が多く登場する。この小説は老婆2人、初老1…

白洲正子「鶴川日記」845冊目

これもまた「一万円選書」から。白洲正子、お姿とお名前はよく知ってるけど、書かれたものを読むのは初めてです。 少し前にたまたま、鶴川に住む友人宅に伺うことがあって、車で「コメダ珈琲店」に連れて行ってもらったりもしたのですが、町田市の中心とはち…

藤本義一・選、日本ペンクラブ・編「心中小説名作選」844冊目

<すみません、全部ネタバレ書いてしまったので、これから本を読むつもりの方は以下読まないでください> 心中ものって歌舞伎とかでも嫌いな方なんだけど、理由があって読んでみました。 理由というのは私が愛読している作家、佐藤正午が今、突発性難聴に悩…

立川談四楼「ファイティング寿限無」843冊目

これも「一万円選書」の一冊。すごく面白かった。さすが落語家。テンポの緩急が絶妙で、スリルと落としどころの感覚も鋭いし、言葉の選び方にセンスが感じられる。「自分はこれを表現したい」というより、読む人のために純粋にエンターテイメントとして書い…

アン・サリバン「ヘレン・ケラーはどう教育されたか ‐ サリバン先生の記録 ‐」842冊目

1973年に出版された本。図書館の「保存書庫」から引っ張り出してきていただきました。 先日、たまたま1962年の映画「奇跡の人」を見てけっこう感動したんだけど、最初の言葉「water」で物と単語の結びつきを学んだ後、どうやってヘレン・ケラーは抽象的な思…

筒井康隆「パプリカ」841冊目

今敏監督のアニメ映画「パプリカ」がすごく好きで、今さら原作を読んでいます。きっかけは、これと同時期に筒井康隆(および多数の読者たち)が執筆中だった「朝のガスパール」を読んだこと。 夢の中にダイブできる世界の作品は、映画やSF小説でもう見慣れて…

筒井康隆「朝のガスパール」840冊目

読んでるとちょっと気分が悪くなる、筒井康隆作品のあの感じ。パソコン通信(私も少しやってた)の内輪っぽさとオタクっぽさ。これでも新聞小説という一般向けメディアなので若干は抑え気味な、それらの「あの感じ」が懐かしいような思い出したくないような…

福井県立図書館「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」839冊目

これは面白かった。ときどき声を出して大笑いしてしまった。こういう罪のない笑いって、ほんとなごみます。 この図書館の覚え違いリストは何度か見たことがあって、そのたびにクスクス笑ってましたが、この本はとても構成がよくて、間違ったほうのタイトルに…

スチュアート・マクブライド「獣たちの葬列」838冊目

原題は「A Song for the Dying」、死にゆくものへの歌。一方の邦題はバイオレンスアクションって感じがするけど、内容は原題とも邦題とも違って、クライムサスペンスだった。ただ、警官が悪いヤツや乱暴なヤツばかりで、スコットランドではそうなんだろうか…