江川紹子「「カルト」はすぐ隣に」574冊目

多分何かで紹介されてたから借りようと思ったのだけど、読んでみたらなんとも寝覚めが悪いほど怖い本でした。

「本当の自分」とか「絶対正義」や「絶対真理」を追究したいって、若いころはずっと思ってました、私も。勉強は嫌いじゃなくて、むしろ人付き合いが苦手で、どうして自分以外のひとたちはみんないい加減なんだろうって思ったりしてた。何度も裏切られた気になって、繰り返し繰り返し傷つくうちにやっと、人間ってもともとそういうもんなんだってわかってきて、争いごとも殺人も、愛がある限りなくならないって今ならわかる。でも心の奥に、全員が清純で澄み切った心の人ばかりで、誰も傷つかない天国がどこかにあるといいと思ってる。家で猫と遊んでる時が一番安心できて幸せ。私がカルトに走らないのは、カルトも全部怪しくて信用ならないと最初から疑ってかかってきたからだ。それだけ。違いは、自分で考えることを止められるかどうか。

自分で考えることをやめる「能力」。それって割と日常生活では重宝されてる。生徒がいちいち先生に食って掛かってたら授業は終わらない。夫と妻が毎日いろんなことの線引きを厳密にやってたらすぐにくたびれてしまう。

だから、大きい黒い網にからめとられてしまうかどうかは、本当に微妙。

私も、あえて人とつながろうとして、ここ数年はサークルみたいなものに入ったりして、それなりに重用されたこともあったけど、うさん臭く感じてるからか、どこか入りきれないでいると、急に「上の人」って攻撃に走るんだ。それでまた何度も痛い目にあったけど、それでもやってみて良かった。財産をとられたり人を攻撃したりするところに行かなければ、取り返しがつくうちに傷つくのは必要なことなのかもしれないと、今は思います。

たくさんの人に会って真剣に話し合って、傷ついて、それでも真実を見抜く気持ちは忘れないで…そう思います。