パティ・スミス「ジャスト・キッズ」617冊目

私は芸術家のドキュメンタリー映画を見るのがすごく好きで、元々よく知らなかった人でも、見ているうちにその人たちの作品の美しさや、それらを生み出すために生きてきた葛藤に泣けてくることが多い。(NHKの「ドキュメント72時間」で普通の誰でもない人たちの定点観測を見るだけでも、たいがい泣ける)私は小さい頃からずっと冷たそうとか人間に興味がないとか言われてきたけど、これほど知らない人たちの人生を覗き見たがって、毎回感動できるんなら、特別ほかの人に興味がないというわけでもないんじゃないか。

パティ・スミスはアルバムを1枚聞いたことがあるていどで、8年前にこんな本が出てたことは知らなかったし、メイプルソープという著名な写真家との関係も全然知らなかった。最近「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」という映画を見たら、そこで彼女がトークショーをやって著書について語っていて、読んでみたいなと思いました。

最初は「けっこう厚いな~読み切れるかな~」と思ったけど、やせっぽちの少女として彼女に化体してニューヨークに出てきて、チャーミングで危なっかしい人たちと出会って愛し合って刺激しあって、それぞれの生まれ持った本質を開花させていくのに同行させてもらって、やがて行く道が分かれていって最後の別れまで一緒に経験して一緒に泣きました。実に、素晴らしい本です。ロバート・メイプルソープという人の人間としての美しさも、魂の純粋さ、彼だけが持つ天使の翼みたいなもの…才能と、パティ・スミスのエネルギーや大きな人間性に圧倒されました。

彼らだけじゃないのだ。人間はみんな、自分だけが持って生まれた翼みたいなものを、できるだけ大きく広げられたらいい。誰かが作った仕組みにすっぽりはまって、誰かから褒められるために同じことをしていい子になることなんて、神様は本当は望んでない。

私も人生折り返して、どこまで自分の翼を広げられるか、というところに今いるので、明日の自分のために、この本のことをずっと忘れずにいたいと思います。 

ジャスト・キッズ

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