ブレイディみかこ「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」655冊目

ブレイディみかこさんは、テレビや雑誌の記事で何度も見たけど、私と同年代なのだ。私もパンク好きでバンドやってたし1992年にロンドンに半年住んでいたことがあって、「ここの誰かと恋をして結婚して、ずっと住んだらどんな感じだろう」と何度も何度も想像したので、彼女の書くものは私の「実現しなかったほうのif」のように見えてじっくり噛みしめてしまうのです。

著者は息子に向かって自分のことを「母ちゃん」という。それがどうしても、西原理恵子のキャラクターに重なってきて、どうしてもブライトンの母が割烹着を着てる図を思い浮かべてしまう。彼女のおかっぱ+帽子の姿を見慣れてるのに。

著者の口調があまりにも普通に日本語(変な翻訳口調にならず)なので、(息子さんの口調も自然な日本の少年の言葉に置き換えられてるし)完全にアウェイの異文化の中にいることを忘れそうになります。でも学校や普段の生活のいろんな部分が違う。その一方で、小さな違いを見つけ出してすぐにいじめを始める人間の心は、まったく同じだなと思う。違いをプラスに生かせるのは自分に余裕がある人で、日々の不満を貯めたままになっている人はすぐに攻撃を始める、徒党を組む。その中で見た目からルーツまで異なる者として暮らして子どもを育てていくには、肝っ玉母ちゃんになるしかないのか、それとも元々そういう素質があるのか。

著者のフラットで冷静でありながら温かい視線、息子くんのまじめで正しい性格、それに読みやすく構成された文章の上手さ。素晴らしいエッセイストだなぁ。他の本も読んでみようと思います。 

(2019年11月25日13刷 1350円税別)

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー