ケン・リュウ「宇宙の春」701冊目

彼自身の短編集、日本版4冊目。ハヤカワのちょい縦長のこの本を読んでるとちょっとワクワクする。

「宇宙の春」

今回も情緒豊かな、SFって感じのしない短編もあります。「マクスウェルの悪魔」は米軍から親の故郷である沖縄へ送られた、日系人女性のお話とか。彼女は”ユタ”の子孫であり、亡き人の魂を扱うことができる。それが利用されるんだけど、結末は…。中国系アメリカ人の彼がどうやってこんなに深い物語を書けるのか、まったくもって凄いとしかいえません。

「ブックセイヴァ」はいわゆる”不適切な表現”を自動で”修正”するツールがもしあったら、というお話。

「思いと祈り」はour thoughts and prayers are with you、という英語のお悔やみの決まり文句をモチーフに、不幸な事件を拡散してしまうことによる二次被害を描いています。

「充実した時間」は、アイロボットじゃなくて「ウィロボット社」のワーカホリックなエンジニアが発明したネズミ型お掃除ロボットと、その後継品として作られた??型ロボットの行く末について。

「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」は女性3人がさまざまな動物に変身して縦横無尽に戦うお話。この3人がカッコよくて!

「メッセージ」文明がかつてあったのに滅んでしまった未知の星に足を踏み入れる父子のお話。この暗号、さすがだなぁ。そして切ないストーリーもさすが。

「歴史を終わらせた男」に出てくる「ナイフの哲学」という映画は実在してるみたいですね。過去の日本の軍隊が中国で行ったことを描いた”スプラッター”作品だと書いてるサイトもありました。日本では上映もDVD化もされてないようです。

などなど。ケン・リュウ星新一に見えてきます。改めて星新一ってすごかったよなぁ。アイデアの泉だった。ケン・リュウもこの先できる限り全部読むつもりだけど、星新一も読み直してみようかしら・・・(膨大すぎるかしら)