中村安希「N女の研究」1005冊目

フルタイムの仕事を辞めてから、興味があっても今までは遠くから眺めているだけだったNPOのいくつかに実際に顔を出すようになって、若くてキラキラした女性たちが生き生きと働いているのを何人も見ました。中には高学歴の帰国子女と思われるバイリンガルで仕事バリバリにできる人も。彼女たちのような素敵な女性たちは、もうGoogleAmazonで働こうとは思わないようになったのかな?と不思議に思っていたので、何か答と言わないまでもヒントが見つかるかと思ってこの本を読んでみた次第です。

女性は働くうえで様々な不利な点があるし(育児はともかく、出産という肉体的負担を担うことは女性にしかできない、とか)、日本は女性の社会での地位が”先進国”のなかで極端に低いことは客観的なデータでも明らかだけど、個人的な感覚では、女性のほうが会社を辞めることをためらわない、という印象があります。男性のほうが独身のうちから、自分は将来大黒柱になるんだという責任感なのか、それとも、よい会社のよいポジションにいつづけたいという意識が強いからか、会社の中での自分のポジションというか居場所を固持しようとする人を多く見たと感じています。何が言いたいかというと、有名な会社で働きたいとか、お金をたくさん稼ぎたい気持ちより、自分にとってやりがいのある、面白い仕事を女性は選ぶ。新しい職場に移ることをためらわない・・・と私は普段から思ってるってことです。

GoogleAmazonに入りたがっていた女性たちは、有名だからとか給料が高そうだからという理由で、入りたがっていたわけではないんじゃないかな。彼女たちにとって一番エキサイティングで面白そうだから、その仕事をやりたいと思う。だから、私が知りたかったのは、そういう会社よりもNPOのほうがエキサイティングだと考えて選択する女性が増えてきたのかな、外資とかトップ企業ということにもう期待を持たない人が多いのかな、ということ。

ちなみに、私はバブルの頃に成績もコネもなく、就職できずに実家に帰るかと思ってたときに外資の会社の追加募集にひっかかった人間です。当時人気があったのは日本の銀行や証券会社で、外資しかもメーカーに行きたがる人は、私の周りにはいませんでした。でも外資なら私のようなコネなしの女性でも問題視しないで雇ってくれて、その後いくつかの企業は「就職したい企業」トップ10に名を連ねるようになりました。そういう新しいジャンルに飛び込んできたのもまた、女性や地方出身者が多かったのかも。

彼女たちが何を求めてNPOに入るのかは、多少見えた気もするけど、この本は離職する人の多さにも触れています。離職したあと、もっとやりたい仕事を見つけた人ばかりではなくて、夫について海外に行って子育てをしている人もいる。個人としてはそれも素敵で応援したいと思うけど、キャリアとか社会とか考えると、少しもやもやします。自分とか友人なら、「それでも幸せなら一番じゃない?」って躊躇なく言えるんだけど、そんなこと言ってるからこの国の女性進出が進まないと言われたら、なんとなく申し訳ないような気持ちにもなる。うーむ。

というわけで、もやもやがあんまりまだ晴れません。もっと、自分の近くにいる彼女たちといろんな話をしたり、彼女たちがどこからやってきてどこへ去っていくのか、定点観測を長く続けてみたい気もします。

N女の研究

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