ミシェル・ウェルベック「服従」467冊目

フランスにイスラム政権が発足する、という小説。
「え!?』
極右政党が一般人を攻撃するようになり、穏健派で常識派のイスラム党の党首に一気に人気が流れて、まさかの選挙結果により左派とイスラム党による連合政権が発足するんだけど、党首の実力で彼が大統領に。主人公は内向的な、村上春樹の小説にでも出てくるような大学教師。イスラム教育を行うため、まず教師のうち女性が全員解雇され、教徒でない男性教師も。主人公は大学に戻るために改宗を迫られる・・・・
というあらすじを聞いて、フランスってすごい国だな、シャルリ・エブド事件後にこんな本が出るなんて。と驚愕しました。
何も知らずに読み始めたら、内向的な青年の自分語りのまま、何も起こらずに流れる日常的な小説だと思っただろうな。まさか政治的なことに巻き込まれそうにないタイプの人が主人公なんですよ。こういう感覚って不思議。日本の小説でも、「まさかこの人が」という効果を狙うことは多いけど、日本ではこの人を主人公にこのテーマの小説は出てこないだろうな。多分ノンポリの大学生とかフリーターとかにしそう。
色々、ミスマッチ感とか不自然さが興味深い作品でした。社会が変わっていくことに注意が行かないほど、大学教師の女性関係や日々の食事や感じていることば描かれた不思議な小説でした・・・。