村田喜代子「光線」324冊目

安定の読み応え。
といっても、最初のほうは若干いつもの幻想的な空気を感じず、彼女の書くエッセイのような印象が少しありました。後半「夕暮れの菜の花の真ん中」、「山の人生」、「楽園」の3編は、まさに村田喜代子節、デビュー作をも思わせるスリリングな展開が続いて、読書の醍醐味を味わわせてもらいました。

 

そこに出てくるのは共通して「完全な暗闇」。人がもれなく誰でも本質的に感じる恐怖です。
彼女は、そのような恐怖に「逆らう」人を書くことはないんですよね。立ちすくみ、黙って自分の動揺や闇そのものを凝視する。観察する。

 

村田喜代子が闘病していたことも知らなかったけど、こんなにたくさん本を書いていたことも知らなかったです。読みたい本がたくさんあって嬉しい…。