2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

アントン・チェーホフ「かもめ・ワーニャ伯父さん」728冊目

映画「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹の短編がベースだけど、映画オリジナルのお芝居の練習場面もあって、演じられているのがこの「ワーニャ伯父さん」です。映像化されたもののソフトが見つからなかったので、戯曲を読んでみました。 最後に、”不器量だ…

村上春樹「女のいない男たち」727冊目

<この本および映画化作品の内容にふれています> 「ドライブ・マイ・カー」を見たので再読してみました。 映画の原作になっているのは「ドライブ・マイ・カー」のほか「シェエラザード」もだけど、「木野」の中の妻の浮気を発見する場面も使われてました。…

河野哲「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」726冊目

栗城史多さんの訃報、覚えてる。それまでの準備不十分な登山のしかたや、やたらと人にアピールする感じから、もしかしたら、山で死を選ぶ覚悟だったんじゃないかと思った。いったいどんな風に生きて死んだ人なのか、いつかドキュメンタリー番組やノンフィク…

小松左京「闇の中の子供」725冊目

岸政彦「給水塔」の中で、筆者が大好きな小説として語る「少女を憎む」が読みたくて借りてきました。 美しい思い出と陰惨な結末で構成される小説が好きというのは奇妙な気もするけど、なんとなく納得。「ラブリーボーン」っていう映画を思い出しました。まだ…

東田直樹「自閉症のうた」724冊目

この人の本を読むと、いつもパッと目が開かれたような気がする。 私が「理解した」と思っていたことは、「自分や誰かが設定した仮説に納得したつもりになること」でしかなく、東田氏がものごとを語るときは「理性と五感でわかるまで探って出た答」をつづって…

岸政彦「図書室」723冊目

この人の小説は好きすぎる。 「図書室」の「私」は私だ。大した思い出はないけど、好きじゃない人と結婚したりしないで、50歳になっても自活できてる。新しく何も起こらないから、昔のことをよく思い出す。思い出すことは、どれもまぶしいように思われて、な…

李琴峰「五つ数えれば三日月が」722冊目

「彼岸花が咲く島」が面白かったので、過去の作品も読んでみます。 この本に収録された2編は、台湾から日本に留学してきた女性が日本の女性に恋をする、親密で繊細な作品。著者が自分の生活のなかで経験したり想像したことを膨らませたのかな、と感じる、若…

サイモン・シン(青木薫・訳)「フェルマーの最終定理」721冊目

あー面白かったー! 本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、…

李琴峰「彼岸花が咲く島」720冊目

どこだろうこの島は、なんだこの言語は? そういう新鮮な驚きが、読み始めてすぐにありました。地図が冒頭に載っているけど、形からわかるようなわからないような。でも、登場人物の一人、ヨナの話す言語を見てひらめいた。「これは与那国だ!中国語圏に一番…

山田詠美「血も涙もある」719冊目

新刊を見かけたので、久しぶりに読んでみました。ドロドロの女の愛を絶妙な筆致で巧みに描いたものを期待して。 感想をいうと、全然ドロドロしてなかった。結婚している男女とその周辺の女と男の愛欲はあるんだけど、ぜんぜん迫ってこないくらい乾いてた。書…

佐藤正午/東根ユミ/オオキ「書くインタビュー4」718冊目

1~3は2017年に一気に読んだんだけど、その後は連載も読んでいたので、既視感がすごい。連載された何かをまとめて後で読むなんて経験は、大昔の月刊少女マンガ以来じゃないかなぁ。この本に関しては、全部が全部既読というわけでもないので、読んだことが…

ロバート・A・ハインライン「時の門」717冊目

先日読んだ筒井康隆「ジャックポット」が、この短編集の中の「大当たりの年(The Year of the Jackpot)」からタイトルを取ったと書いてて、気になったので乗っかってみました。 「大当たりの年」では、<以下ネタバレ>大当たりというより、いきなりバス停で…

ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け」716冊目

この人の本は本当に面白い。「地べたをはいずりまわる」とこの人は表現するけど、日本古来の意味で「地に足がついている」から面白いのだ。 ロンドンに住むことに憧れた数十年前、万が一居残ったらこんな人生があったのかもしれないといつも想像するんだけど…

筒井康隆「ジャックポット」715冊目

断筆を解いたあとけっこう書いてたんですね。これは最新刊。これはSFカテゴリーじゃないな。エッセイありフィクションあり、フィクションのほうはボルヘスみたいに自作の小説を「1分にまとめました」っぽく書いている感じ。読む方も楽だし書く方も楽。まどろ…