これはエッセイ集。さまざまな雑誌に1980年代から2000年代までに掲載された雑多な、主にマンガや映画の感想をまとめたもの。特に映画に関しては私が見たことがあるもの、最近見たばかりのものも多いので、うんうんなるほどと楽しく読みました。映画の感想を人がどう語りたがるかを書いた「批評の型あれこれ」という文章では、よかったよかったしか言わない人、気に入らない箇所の文句しか言わない人、監督の普段の言動にしか興味がない人などいろんな人が出てくるけど、萩尾望都自身は感覚が豊か過ぎてこまかい分析をやりきれないんじゃないかなぁ、言葉よりはそのまま絵や新しい作品のストーリーが出てくる芸術家タイプなんじゃないかなーと想像してしまいます。
「一瞬と永遠と」という、タイトルにもなっている短いエッセイでは、「トーマの心臓」などを原作とした舞台を見たときの一瞬の感動が永遠と同じようにも思えた(勝手に私の言葉にしてすみません)、ということが書かれていて、すごく共感しました。映画のタイトルで一番好きなのが「永遠と一日」だし、史上最高の一瞬と永遠とは同じもののように思えると感じたことが何度もあるので。やっぱり、基本的な考え方とか感じ方に共感できるものがある人が作る作品だから、共感できるのかなー。
「ノルウェイの森」について書いた章を読みながら、そうだご飯をどんどん作ってガツガツ食べることは生きることだ、学生の頃私は直子に傾きそうになってたけど緑となって生き延びたんだ、と思い至ったり。
それにしても、予想を超える文章のうまさ、おもしろさ。感受性が鋭敏で豊かで。今更ですが、追いかけさせてもらおうと思います。
(2011年6月14日発行 1800円)