三島由紀夫「金閣寺」686冊目

最初に読んだのがいつかなんて思い出せないくらい昔だけど、「100分de名著」に刺激されて再読。本より最近みた「炎上」とか「五番町夕霧楼」(佐久間良子松坂慶子も)の印象のほうが強い。

人が自分の勤務先の、しかも、貴重で美しく古くて大事な建物を焼くという心理は、単純な「社会への恨み」ではない気がする。劇場的犯罪だし、複雑で深く偏執狂的な長年の葛藤があったんじゃないかと思うにつけ、三島由紀夫版のほうをイメージしてしまいます。

三島由紀夫の人となりは「なんじゃこいつは」と思っていて、身近にいたら多分苦手だったと思う割に書いたものは高く評価してきた私ですが、この本はめんどくささが勝ってしまいました。「豊饒の海」が最高傑作だと思ってるんだけど、あの作品には主要人物自身の生死と愛憎が関わっているから、私には理解しやすい。吃音や醜さの自覚、つまり過剰な自意識だけが知的に空回りしつづけるのを1冊読み切るのは、けっこうしんどかったです。三島由紀夫のこの作品が一番好きな人とは気が合わないだろうなぁ。だから平野啓一郎の本はあまりピンとこないのか。ちなみに番組で朗読をやってるのが山田裕貴ってのが、なぜかは説明できないけど、恐ろしくぴったりだなと思う!

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)