本)ミステリー

キャロル・オコンネル「クリスマスに少女は還る」427冊目

なかなか読み応えがありました。女性らしい情感あふれるミステリーで、スリリングな構成も文章力も良くできていて、謎解き以外の部分で読み物としてもじーんとくる部分がありました。辛口コメントをすると、なにかすごく新しいものがあるわけではないのと、…

恩田陸「三月は深き紅の淵を」425冊目

長年にわたって多少でも本を読みつづけてきた人にはたまらない、読書のゾワゾワやドキドキやは〜~っ!がガッツリと味わえる、歯ごたえのある作品でした。この人の本読むの初めてだけど、すごく達者で自信にあふれていますね。私と同年代くらいだけど、才能が…

伊坂幸太郎「死神の精度」424冊目

だんだん、ジャンル分けってあんまり関係なくなってきてる気がしますね。「漁港の肉子ちゃん」にも、最後に明かされる謎があったし、この本の場合「事件」が起こって人が死ぬことはミステリー的だけど、犯人探しやトリック解きの側面はありません。 この本は…

東野圭吾「犯人のいない殺人の夜」420冊目

うーむ、黒い。目をそむけたくなる人間の暗部を晒す傑作選、ってかんじです。この短編集に収録されている作品には、以前「東野圭吾ミステリー」みたいなタイトルの1話完結ドラマとして放送されたものがいくつもあります。たとえば冒頭の「小さな故意の物語…

岡嶋二人「解決まではあと6人」418冊目

いいな、こういう本格ミステリー。ガッツリとくる読み応え、堪能しました。説得力のある仕掛けとしっかりとした構成力。読者としてミステリーを長年楽しんできた人にしか書けない(と思う)お楽しみがたっぷりの作品でした。さすが、(今なぜ)Book1stイチ推…

赤川次郎「黒い森の記憶」335冊目

ジャンルはミステリーではなくホラーだそうです。舞台の脚本のト書きみたいな情景描写がすごく多くて、ストーリーの進行が少ないなぁ。ミステリアスな漫画みたいです。 多分まだ若い頃の作品なんだろうな、60そこそこの主人公が「xxじゃろう」みたいな、昔…

有栖川有栖「高原のフーダニット」327冊目

久々に図書館に行ったら、つい余分に本を借りてしまった。本格ミステリのこの著者の本はわりと読んでるほうで、今回もタイトル借り。「フーダニット」=whodunnit=who'd done it ミステリといえば、の「犯人探し」。この本は中短編集だし、フーダニットがタ…

乾くるみ「イニシエーション・ラブ」293冊目

人が死んだリ恐ろしいことが起こったりするわけじゃなくて、普通のラブストーリーなんだけど、ジャンルとしてはミステリーと言うほかありません。 <以下ネタバレ> マユちゃんに他に男がいること、夕樹をタッくんと呼ぶ時点でほかにタッくんと呼ぶ男がいる…

山田正紀「渋谷一夜物語」232

なんとなく図書館に寄って、タイトル借りしました。 ちょっと後悔。 わりと面白かったけど、血が出たり内臓が引きちぎれたり、いちいち露悪的な表現が多いのがちょっと・・・。ただし、どす暗いんじゃなくて、好きな女の子を驚かせようとしてつい表現がエス…

道尾秀介「向日葵の咲かない夏」220

「トップランナー」にこの著者が出てるのを見て、こういう人が書くのはどんな小説なんだろうと思って読んでみました。 感想: なるほど。辻褄が合っている。と思う。人間の心の弱さ、いまの世の中の生きにくさ・・・人間の身勝手さ、流されやすさ・・・。切…

湊かなえ「告白」218

ああ、読後感最悪。 なんだか悪意だけが人を支配してしまうパラレルワールドみたいでした。文庫版は巻末に映画化した際の監督のインタビューが載ってて「それだからこそ人は愛しい」のようなことを言ってるんだけど、そういう読後感がふつうに得られる作品だ…

志水辰夫「情事」215

同じ作家の本がもう1冊あったので、読んでみました。こっちも、なかなかよく書けていました。(←何様目線?) 中年男性の気持ちや、周囲の人たちのようすをとても丁寧に書いてあるので、無理がない。ああ、そうなんだろうなぁ、という気持ちで読み進められま…

志水辰夫「行きずりの街」214

「余暇に軽く読めるミステリー」のつもりで読んだら面白かった。よく書けている。 とはいっても、うだつのあがらない中年男+超いい女との純愛+唐突に巻き込まれた凶悪事件+唐突なのにふつうの人なのに大活躍、という定石を踏んでいるのは事実。 土曜ワイ…

桐野夏生「残虐記」213

週末、気分転換に軽いミステリーでも・・・って読むもんじゃないですね、この人の本は。 タイトルからしてキッツイけど、実際のところ、「柔らかい頬」より「グロテスク」より、私の読後感はまだ軽かったのですが。 25歳の工員が10歳の少女を誘拐、監禁して…

伊園旬「ブレイクスルー・トライアル」205

書店の店頭でなんとなく買った。 Amazonのレビューは星1つから星4つまでキレイに分かれてます。しかし最もよく「一般的な読む価値」を表してるのは古本の値段であって、文庫本がもう2刷なのに1円から売られているところをみると、この本は一般的に、軽い気持…

和久峻三「時効」194

お久しぶりです。久々にミステリを読みたくなって、パパ'sライブラリを繰ってこの本を選びました。警察ものです。タイトル通り、時効が近づいている事件の犯人をどうやっておびき出して逮捕するか、という警察側の捜査の日々を描いています。テーマはわりと…

ダナ・フレンチ「悪意の森」上・下182

アイルランドの作家の2007年のデビュー作。US、UK、IREで数々の賞を受賞したと帯に書いてあるので、ためしに買ってみました。 「森」は精神の深淵の象徴でもあり、最初から心理描写が中心なので、読んでいて息苦しくなってしまうんだけど、デビュー作とは思…

山口雅也「生ける屍の死」181

この本ずっと読みたかったの。読者ランキングとかで1位2位という名作らしい。 主人公は「革ジャンと革パン、安全ピンだらけのTシャツを着たパンク探偵(苦笑)」ってシド&ナンシーかよ。細田和也「作家の値打ち」で激賞された作品ですが、このベタベタな設定…

探偵Xからの招待状! 179

あーあ読んじゃった。 現在NHKで放映中の「探偵Xからの招待状 Season2」が現在ちょうど推理結果受付中。Season1は見逃してたのですが、今日書店に長居したときに文庫本化されたものを見つけて買って、さっそく読みました。 8人の作家の短編小説を携帯小説と…

逢坂剛「牙をむく都会(上)(下)」177

逢坂剛の時代物も家にあって、読みかけたんだけど途中でギブアップ。 よほど丁寧にやさしく書かないと、今と言葉が違うから読み進むのがツライんだなぁ。今まで読んで感想を書いてきた時代物の著者の人たちをますます尊敬します。 で、上下2巻だけどこっちを…

逢坂剛「銀弾の森・禿鷹3」175

これシリーズものなんだ。ハゲタカと呼ばれる史上最強(最凶、とかいうとハードボイルドっぽい?)の悪徳警官が、欲望のままに暴力団や女を転がす物語。 転がして何が楽しいのかさっぱりわからないので、この小説の面白さも全然わかりませんでした。破壊して…

逢坂剛「情状鑑定人」174

練られたプロットの短編集。初期の作品集らしいんだけど、短編集であるということも、初期の作品だということも、読んで初めてわかる。出版社のこの作家の担当の方、そういうことわかるように外に書いといてください。重ね重ね。 感想ですが、どの作品もどん…

逢坂剛「砕かれた鍵」169

・・・なるほど。こう続くわけか。(←感想) で、その後は?・・・と、ぱらぱら「よみがえる百舌」を読み直してしまった。こっちの方がよっぽど意味深な終わり方をしてるので、「帰ってきた百舌(仮)」もアリなのではないか。 ・・・あっ、あった。百舌は出…

逢坂剛「幻の翼」168

しまった、また読む順番を間違えてた。 「百舌」シリーズはこれが2冊目だったらしい。すでに読んだ「よみがえる百舌」は4冊目!めちゃくちゃ飛ばしてしまった。どうりでヒロインの苗字も違うし夫は死んでるし・・・でもおかしいとは気づかなかったけど・・・…

逢坂剛「しのびよる月」166

165の前に書かれた短編集。短編のタイトルが、「しのびよる月」だけじゃなくて「裂けた罠」「黒い矢」etc、まったく正しく内容を表してるんだけど、なんとなく、それだけ見ると実際の内容よりシリアスな印象で、ぴんと来ません。でも気になったのはそれだけ…

逢坂剛「配達される女」165

つかの間の逃避・・・。久々のパパ’sライブラリーから。 「軽ハード・ボイルド」というジャンルだそうです。くたびれたコートを着た男性刑事二人+謎の女性刑事一人が、ときに無茶をしながら、町の事件を次々と解決していきます。昔からの確執あり、ほのかな…

東山彰良「逃亡作法 Turd On The Run」151

この本を読み始めて何に驚いたって、ここ数十年の新刊本でおよそ見かけることのなかった●●●とか■■■■みたいな表現が伏せ字なしにふんだんに使われていることです。宝島社おそるべし。こういう●●●とか■■■■って、私が聴くような日本のロックですら一般発売され…

東野圭吾「殺人の門」147

4冊目。 感想。・・・夏目漱石「こころ」を思い出した。「殺人の門」ってくらいなんだから、「青春の門」とかを思い出すべきなのかもしれませんが、読んでないので、ごめん。 頭から最後まで、Stream of consciousness、男の内面の独白。そして「こころ」で…

東野圭吾「幻夜」146

連続3冊目だ~。 この「幻夜」は「白夜行」の続編的作品らしい。パラレルストーリーのようでもあります。 読み応えはあるけど、読中感がすごく悪いところはどれも同じ。今回の解説者、黒川博行も書いてるけど、ディテールがよく書けてて自然なので、「え~~…

東野圭吾「悪意」145

「白夜行」にすぐに続いてもう1冊。なかなかaddictiveな作家です。 今回は体裁が凝っていて、容疑者と刑事の手記を章ごとに交代で見せていくという展開がスリリング。何度も何度もどったんばったん「大どんでん返し」を繰り返しつつ、真相に迫っていきますが…