面白かったです。この著者は、ツカミがばつぐんにうまいし、緩急のつけ方や、読者の驚かせ方がうまくて、ぐいぐい読ませます。
その上で、作家歴がすごく長い老練の作家の作品を読んだときみたいに、人の深い心理とか、業みたいなものを感じられる作品になってきたのではないか…と思う箇所もありました。この本における”あんまり信頼できない語り手”が正体を現したあたりから、感情表現が急に激しすぎて、ちょっと違和感を感じてしまいましたが。
この作品の舞台は少年院と、そこを出た後の若者たちの生活で、普段あまり縁がなく考えることもない彼らの世界に少しだけ思いをはせることができました。この著者の作品は、いつも最終的には人間愛のある世界をイメージできるもので、これもそうなんだけど、途中は読者の気持ちをかき回す意図もあるんでしょう、タイトル通りの復讐に次ぐ復讐の連鎖も描かれます。
私のとぼしい個人的な経験から考えると、大きな過ちを犯してそれに自分で気づいた人は、いい気になって自分の正義を振りかざし続ける人より、ずっと優しい。そういう、優しくなった魂にこそ、この世にとどまって愛を与え続けてほしいと思うんだけど、人は一度の大きな過ちで死ぬまで裁かれ続けて、一度も大きな過ちで裁かれていない人が気持ちよさそうに生き続ける、というのが現実。この小説は、被害者・加害者という軸で人を分類するのではなく、人が過ちを犯すに至った道のりや、巻き込まれて変わっていく周囲の人たちの中にも生じる悪魔的な変化と、それをなんとか昇華させることを試みることについて書いていて、こういう視点って大事だなと思いました。
